売上至上主義から顧客満足至上主義へ。大きく方針転換したメディプラスのこれまで、現在、そして今後について(後編)

売上至上主義から顧客満足至上主義へ。大きく方針転換したメディプラスのこれまで、現在、そして今後について(後編)


代表取締役 恒吉明美 × COO 扇竜平 対談(後編)


代表取締役 恒吉明美×COO 扇竜平 対談(前編)はこちら


ロイをCOOに抜擢した理由とは?


―さて、いよいよ、この対談の本題でもある「ロイをCOOにしようと思った理由」について、恒吉さんに聞きたいんですが。
扇:それは僕もまだ聞いてないので、ぜひ聞きたいですね(笑)。
恒吉:まず、どのタイミングで思ったかというと、最初の面談から決めていました。そこからの時間は、自分が持った確信に間違いがないか、万が一間違ってたら困るので(笑)、どこかに穴がないかをチェックするのに要した5年だったかもしれない。だから、ロイが入社してからは「私は45歳になったら世代交代します」ってずっと言ってたんですよね。たまたま私の妊娠で、予定より1年早くなったんですけど(笑)。
ロイのどういうところを評価しているのかというと、3つあります。まず、本質を見抜こうとする精神。頭がいいのはもちろんだけど、そういう人はどうしても課題を分析して解決策を示して終わりってなることが多い。でも彼の場合は、さらに掘り下げて、その根底にあるものを知ろうとするところがすごい。2つ目は、それなのにおごらない謙虚さ。3つ目は、同じ意味かもしれないけど、誰よりも努力家であること。実はここが一番すごいことかもしれない。

―本質を見抜こうとする精神。謙虚さ。そして誰よりも努力家。この3点がロイの強みであり魅力であり、COOに選んだ理由であると。
扇:ちなみに「おごらない」ってところは、実はおごったことがあるんです。一回、天狗になった鼻を嫁にボキッと折られたことがあって。「やべっ、俺、天狗になってた」って思って反省して、社長にあやまったことがありました。だから決しておごらなかったわけじゃなくて、ストッパーがいたんです、ありがたいことに。
恒吉:だから、そういうふうに誰かから指摘されたときに、すぐに反省して態度を改めるという謙虚さがあるんですよ。その例で言えば、「KRS(殺す)ビーム」もそうでしたね。ロイに対する360度評価で、「すごく理解してくれる」「気遣ってくれる」という評価とともに「真剣なときの表情が怖い」「目つきがスナイパーのよう」っていう声があって(笑)。ロイの強みである「鋭さ」の部分に対して「怖い」と感じる人もいるってことをロイに言ったら、次の期にはもう「怖い」って言う人は誰もいなくなった。
扇:それは僕の努力じゃなくて、恒吉さんが「KRSビーム」って名づけをしたがために、まわりから突っ込みやすくなったんですよ。
恒吉:「KRSビーム禁止! 次やったら、お前をぶちKRS!」というシールをつくったんですよね。ロイはそれを電卓とか、自分の見えるところに貼っていて、自分からみんなに「もしKRSビームが出てたら、言ってね」ってゲーム化した。





―新入社員がCOOであるロイに対して直接「扇さん、怖いです」とは言えないけど、「いま、KRSビーム出てますよ」だったら言える。コンプレックスだったり、ちょっとネガティブなことに対しても、笑えるネーミングによって、ポジティブな使い方ができる例ですよね。
扇:自分の弱点って、隠してると弱点のままなんですけど、それに名づけをして、いい感じにいじってくれることで、個性として承認されるし、みんなでなんとかしようという感じになって、それが結果的に人を成長させるんだと思います。その人の個性とか特徴に合ったニックネームを考えて、そのニックネームで呼び合うという、うちの会社特有の名づけ文化にも通じますけど。
恒吉:私は私で、自分で何でもやろうとして仕事を抱え込みすぎて過労で倒れたりしてたから、「ふうん。それも社長がやるんだ?」というシールをロイがつくってくれて。
扇:KRSビームのシールが効果絶大だったので、「私にも何かお返してよ」って恒吉さんに言われて(笑)。
恒吉:私、あれで完全に変わりましたね。何でもかんでも自分でやっていたのを、自分がやるべき仕事に優先順位をつけて、その他の仕事は人に振るってことを覚えたし、今は秘書もいてスケジュール管理をしてくれるし、ロイの影響で変わったのは、社員だけじゃなくて、まさしく私もそうですね。

一般的に、社長はCEO(最高経営責任者)も兼ねていて、COO(最高執行責任者)が別にいる場合は、社長の決定を現場で実際に動かしていく、みたいな区別があると思いますが、うちの会社の場合、二人の役割分担はどんな感じでしょうか?
恒吉:たとえば、「ブルーオーシャンはあっちだ!」って指差すのが私の役目で、じゃあ、そこへどうやってたどり着くのかについての具体的な方策を実践するのがロイで。

―社長は潜在的なニーズや目指す場所を見つけて、ロイが仕組み化する。
恒吉:そこでロイがすごいのは、全体的な方針を決めた後に、各人が自分で判断できるように判断基準を現場に持たせることなんです。彼は「雨・傘」が得意ですが、彼が判断したり指示するだけじゃなくて、判断基準の大枠を決めたら、あとは現場に判断を委ねてしまうところが、すごいなって思いますね。

―COOとして、ロイの覚悟はどうですか?
扇:着せられたこの背広はまだブカブカです。まだまだ力不足。でも、役割に合わせて人は育つので、これはいい環境をもらったと思って楽しみながら成長するしかないと思ってます。





今後のヴィジョン、課題について


―二人が考える今後のメディプラスのヴィジョンはどんな感じでしょうか?
扇:世代交代にともなって、継承するところもあればテコ入れするところもあるとは思うんですが、僕としては組織文化の強化に重きを置いていきたいと思ってます。
恒吉:ロイは「今後、大切にするもの」「こう変化させたい」っていうことをはっきりと伝えてくれていて。「認高笑介」(メディプラスのクルーに求められる4つの行動規範「認め合うこと、高め合うこと、笑い合うこと、介け合うこと」を標語にしたもの)に代表される、私たちのDNAとして掲げてきたものを「変えてもいいよ」って私は言ったんです。それに対してロイから「もっと強化します」っていう返事が返ってきた。「変化させないと決めたものを、より強化する」って。すごくうれしかったし、私たち創業メンバーが直感的に「これが大事」って思って続けてきたことを、さらに強化して仕組み化してくれたんですよね。

―ロイが組織文化を強化したいと思う理由は?
扇:うちの会社はファブレスメーカーで、いろんなパートナーに助けてもらっている。脳と心は社内にあって、同じぐらい重要な身体の機能は外でやってもらっているからには、うちの社員に求められることは必然的に、スキルよりも人を動かすための言葉だったり態度だったり、人柄とかになってきますよね。たとえば、さっき話題に出た僕の「KRSビーム」がいい例なんですが、自分の欠点をいじられたり、笑いのネタにされることが苦手な人にとっては、うちの会社は相当きついと思います。だけど、そういうことも楽しめる人にとっては、毎日笑いの絶えない居心地のいい職場になる。





企業理念に共感するかどうかというのは、入社後に変えられるらしいんです。魅力的な理念であればあるほど、いろんな解釈ができるので、共感するのはそんなに難しくない。だけど、組織文化に合うか合わないかは、はっきり分かれると思うので、なるべくうちの文化に合う人を採用したい。文化とは、善悪の基準。たとえば時間に正確な人が、時間にルーズな人を許せないようなもので、なかなかスタンスを変えにくいのが文化と捉えてます。とは言っても合わない人に対しては、違う働き方を前向きに提案したいと思います。そのへんは今後の僕の課題ですね。
恒吉:今後の課題はいろいろあるけれど、1つ挙げるなら、まだ言葉になっていない世の中の潜在的な共通価値を発見すること。それを大きく掲げて、「この価値観だったらメディプラスだよね」とうちを探してもらえるようになっていきたい。広告のインパクトで「うちの化粧品、どうですか?」とこちらから出かけていく従来のやり方だけではなくて、「この価値観だったら、メディプラス」ってお客様のほうから探して来ていただく、選び取ってもらえるブランドになりたい。その前提として、化粧品を選び取るときの価値観を変えていくことが大事だと思っています。
すでに動き出していることで言えば、「ストレスオフ」という独自の価値観があります。40歳のときに私自身がストレスで自律神経のバランスを崩して、一時、肌がボロボロになってしまって「心と肌はつながっている」と痛感した体験から、意識的にストレスをコントロールするストレスオフの大切さに気づきました。それをお客様に提案するだけではなくて、まずは自分たちがストレスオフすることが大事だと思ったので、「ストレスオフ組織」としてのさまざまな取り組みをはじめました。ストレスオフという価値観を一時的なブームにとどまらない文化として確立していくことを、今後の事業展開の核に据えています。
「こんなのが欲しかった」というプロダクトをつくって、それを提供することで人を楽にすることができたら、それが私にとって一番の幸せですね。売上の成長率で一番になっても心の底からはワクワクしないけど、メディプラスのアイテムや提供する価値観によって、楽になってくれる人が一人でもいてくれるとワクワクするんだってことがよくわかった。「おかげで楽になった」と言ってくださるお客様と仲間がいてくれることで、私は頑張れるんだなって再確認しましたね。
ーーー
メディプラスは今後、「ストレスオフ」をブランドコンセプトに掲げて、世界中の女性の笑顔と幸福に貢献するために、化粧品に限らず、ライフスタイル全般に商品やサービスを充実させていきますので、どうぞご期待ください!

コメント